※土日界の常識ロマンス逸話の太陽追った子が東へ&月をおっかけた子が西へ、を勘違いしてやらかした小話がありますヨ!
うまれたときから、あのひとは俺の前にいた
山羊のミルクみたいな肌、小さな手にひかれて俺は生まれた
なぜかなんてわからない
ただ、あのひとが俺のいのちの始まり
それからずっとあのひとが 俺の太陽だったのに
優しいあのひとは 月を追って東に行った
俺が夜を怖がらぬよう灯りをわけてもらうと言って
そしてずっと帰ってこなかった
にんげんたちは言った 小さな彼は魔物に殺されたのだろうと
泣くのを止めた俺は 太陽を追って西に行った
あのひとが死んだならきっと 太陽に還ってしまったのだと思ったから
砂漠の王者 海辺の女王 地中海の帝王
みな強く大きく それでも俺には 恐ろしくはなかった
太陽を手に入れたなら 会わせてくれと言えば誰もが笑った
そして その王者たち誰もが いつのまにか消えていく
だから俺は もっとずっと強くなって自分で手に入れようと思った
あんたのいない夜にだって 負けないくらい強くなろうと
それから 俺は泣いてない いつも胸を張って笑ってる
あのひとが俺みて もう何も心配せずにすむように
* * * * *
草原のどまんなかで東と西に別れたってきいたものでまぁそんな感じのモノローグ。
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土日。
「トルコさん人前ですから…その、控えめに…。」
「誰がいようと構いやしねえ、俺の気持ちに嘘はねえからな。」
恥ずかしがる日本に、何故か胸を張りカカカと笑うトルコ。
そういう堂々として大らかなところは確かに素敵なのだけれど、今のトルコは日本の反応を楽しんでる節がある。
もう、と頬の熱をすいとるように両手を顔にあて日本はため息をついた。
はあ…。
「ではひとつだけ、お願いをきいて頂けませんか?」
「おう、なんでい?」
お耳を、と誘われてトルコは身をかがめ近づく日本の肌ににんまりする。
「私以外の方にまで、あなたの甘い声を聞かせないで下さい。」
耳元で囁かれた言葉の意味と吐息の余韻にトルコはきょとんと日本を見ている。
「お願い、きいてくださいね?」
その日のトルコは、日本と話す時はやたらと体を密着させてはギリシャの飛び蹴りをくらっていた。
もっとも当の日本は恥ずかしがってはいたけれど、まんざらでもない風であったとはフランスの談。
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上の続き土日
「もう、トルコさんたらくすぐったいです。」
耳をくすぐる甘い声に、桃色なんじゃないかと思わせる熱い吐息。
「お前が言ったんだろ?他の奴に聞かせるなって。
じゃあ、こんだけくっついてねえと聞かれるじゃねえか。」
「控えるって選択肢はないんですか…。」
「愛はな言葉になって溢れてきやがるんだ、可愛い顔して可愛い事ばかり言うお前がいるからな、止まらねえよ。」
俺の太陽 俺の小鳥 俺を苛む甘い災い
「神の次に愛してるぜ」
「意地悪ですね。」
「ん?」
耳にちゅ、と口付けたトルコの手のひらに日本が口付け自分の頬に押し当てた。
「私以外の誰かの話をするなんて。」
違えねぇ。
にやりと笑ってキスをして、トルコは日本の首にかじりついた。
あとは秘めごと 夜空の月さえ知らぬこと
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“小さい頃からお前はほんと月が好きあるな”
お月見をしていると義兄さんが言った。
そう 私は月がとても好きだった まるで恋をしているかのように。
ふたりきりの月見、酒がはいったせいか義兄さんは笑いながら話し始める
私が月を追って海に沈みかけた事を。
“無理だと言っても聞かなかったアル、あの頃からお前は頑固者アルね。”
私は覚えていないその頃の事を
からかうでも無く、懐かしそうに話す義兄さんをみてやはりこのひとは大人なのだなぁと思う。
長い時間を 忘れずに飲み込んで生きるからこのひとは大きいのだ
軋む身体でもこのひとは大きくあらねばいけないのだ
だから小さかった私は、彼を追いかけていたのだろう。
“月を持って帰るなんて無茶苦茶言って海に飛び込んで…我が拾わなかったら今頃お前は海底よ、感謝するアル”
ビシッと指をつきつけられ、はいありがとうございますと言えばフフと笑って頭を撫でられた。
仲の良い国々と一緒にいて、そうするのはいつも、私の役なのに。
“でもお前はあんなチビの時から弱いものの為に頑張ったある、はるばる大陸のど真ん中からここまで来て…”
義兄さんの目が一瞬だけ揺れて、細められた。
“さすが我の弟分だけあるアル”
このひとの中では私はいつまで子供なのでしょうね。
そして、考えるのだ記憶もない程幼い頃、私は誰の為にここまで来たのか。
義兄さんもそれが誰かは知らないそうだ。
小さい私は、『あの子』としか言わなかったと。
小さい私が月をあげたいと思った、小さい私よりも幼いであろうあの子とは誰なのだろう。
思案に暮れる私を、今頃でっかくなってお前の事なんか忘れちまってるアルと義兄さんは慰めてくれた
けれど、小さい私よりも幼く小さな…小さなその子が今も存在する保証などどこにもないのだ
義兄さんの優しさは嬉しかったけれど
もしその子が消えてしまったなら、その理由のひとつは私ではないのだろうか
そして私のなかで、月への思いはもっと深く熱いものになった
月を届けられなかった『あの子』をそこに見ているのだろう
月は私の無くした記憶と愛しいもの その象徴
だからこそ今、こんなに焦がれて止まぬのだ
月を御印に持つ 苛烈なひと
いいえとても優しいひと
小さい『あの子』とは似ても似つかぬはずなのに
求めて止まない 太陽のような 大きなひと
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菊さんとサディクさんと甥っ子ヘラクレスくん
「サディクさん、ヘラクレスくん1人でうちにいらしたんですよ。
お休みなのにあなたがお仕事に行って寂しいから一緒にいてって。」
えー…あんにゃろうガキのくせになんて手のこんだアプローチしやがる、
と思ったが心配してくれる菊さんにはんな事ぁ言えやしねえ…。
「ヘラクレスくん年のわりにはしっかりしてますけど…
小学生なんですから、まだまだお父さんが恋しいんだと思いますよ。」
「いやあいつぁ俺の甥なんで…。」
「そういう事じゃありません。」
ピシャリと菊さんに怒られた。
ああ、怒った顔も綺麗だぜ。
「まだ子供なんですから、寂しいのもですけど何かあったら怖いじゃないですか。
今度からサディクさんがお出かけでヘラクレスくんがひとりになるときはお声をかけて下さいな。」
いやそんなあいつはんな可愛いタマじゃねえし、
てかガキのくせに本気で菊さん狙ってるマセガキで
背なんか学年で一番でかいんですぜ、
とか俺はなんとか2人きりになるのを阻止しようと言葉を吐こうとしたが、
次の菊さんの言葉で霧散してしまった。
「私とサディクさんの仲じゃありませんか。」
俺 と 菊さんの 仲 !!
俺の頭は春になっちまった。
おまけに両手で俺の手を握り、切なそうに見上げられて
「ね?遠慮なんてしないで下さい。」
って言われてみろ!!!
この提案を蹴る俺なんざ俺じゃねええええ!
「お世話になりやす!!!」
即答だった。
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あんたは静かに笑ってる、いつものように
だけど
だけど
だけど
何故そんなに泣きそうな目を してる
俺にだけ そう見えるのか
ああ
なんて もどかしい
この距離
なんて もどかしい
この思い
ああ なんて
なんて もどかしい
抱きしめ に いけたら
いつもそう思って
それでもあんたは笑っているから
いつものように
穏やかに
笑っているから
俺は
いつもいつも
そう いまも 動けずにいる
ああ 誰か
背中を押して くれねぇか
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「おやまあ、ぽちくんまで。」
鈴のように軽やかに響く、愛しいひとの声で意識が浮上した。
パシャと言う音に目が覚めた、身を起こせば微笑む日本と目があった。
「すみません、起こしてしまいました。」
「いや構わねーでくだせぇ、図々しく昼寝させてもらってんのは俺の方で。
ぽちくんの写真ですかい?」
首をかいて日本に身を寄せれば、ほら、とデジカメの画面を見せてくれた。
眠っているせいか、ふさふさの毛がよりいっそうふくふくとしたぽちくんは可愛らしいが、
子煩悩にもこうした事を何度もやっているのであろう
嬉しそうな愛しいひとの笑顔の可愛らしさにこそ、トルコの唇は笑みを深くする。
なんだか仲むつまじい親子のような日本とぽちくん。
ならばこうして嬉々として写真を見ている自分と彼は夫婦みたいじゃねえかと。
「日本さんは写真撮るのも上手いねぇ。」
「ふふ、好きこそものの上手なれ、ですよ。」
ならば自分も、日本を撮れば美しい写真に出来るのだろうか。
だがしかし機械如きに愛しい人の可憐さを写し取るとも思えない、
いや日本製のカメラならばそれも出来そうだ。
やはり日本は素晴らしいと納得する。