決定は覆らないと知っている



しばらくお会い出来ません



12月初旬、日本の突然の一言にトルコは携帯を取り落とした。
ガシャンと言う音も、電話の向こうで日本が自分を呼ぶ声も遠い世界のようだ。

な、なんでだ?
ようやく最近マメに会いに行けるようになって日本さんもうちに来てくれたりしてガキに邪魔されつつも日本さんに料理を教えたり教わったりする仲になりポチも懐いて今年はクリスマスにケーキの味見をしあおうかなんて話までして年越そばを食わせてもらう事にもなって、ただ今年は年末ギリギリに漫画祭りがあるから大晦日当日にお越し頂いてもいいですかなんて言ってもら…
は!そうか!


『トルコさんトルコさ〜ん…お返事してくださいな〜私泣いてしまいますよ〜…。』

いささか冗談でもなさそうな日本の声にトルコは慌てて携帯を耳につけた。

「すいやせんっちょいと手を滑らして携帯落っことして蹴飛ばして部屋の端にすっ飛ばしちまいやしてっ!」

まさか自分の意識が遠い所にすっ飛んで消えかけていたとは言えるわけがない。
慌てて取り繕えば信じてくれたのか、携帯の向こうでほっとした声を出す日本に、トルコもほっとする。

「えーと、原稿ってやつですねぃ?」

『はいそうなんです、日があるからつい油断してしまってギリギリなんです。こんな理由でトルコさんには申し訳ないのですが…。』
「いやいや全っ然、気にしねえでくだせぇ。お会い出来ねえのは寂しいですが、会えない時間が育てるもんもありやすからね。
それに、好きなもんに一途なあんたは可愛らしくて、俺にゃぁめっぽう魅力的なんですぜ…。」

甘い余韻をもたせるように囁くと、まあ…と一言溜息まじりに返されて、お?いい雰囲気か?と拳を握りしめていたら。

『ああ!トルコさん素晴らしいですありがとうございます!
やっぱり甘い台詞はトルコさんですね!
すみませんネタが熱いうちに私失礼致しますねっまた連絡致しますのでっ。』

と日本は勢いよくまくしたてると、慌ただしく電話を切ってしまった。
つーつー…プツ…
最近の携帯は電子音の余韻にすらひたらせてくれないのか。
いや、まあ仕方がない、時間がギリギリだと今まさに彼は言っていた。
普段の気配りを忘れない可憐な大和撫子な日本さんが、子供みたいになにか夢中になって周りが見えなくなってる様は可愛いからな、うん。
俺は日本さんが幸せそうなら、それが一番嬉しいんでぃ。


先ほど言った言葉は全部本心。
そう日本が決めた事、日本の望む事を叶えるのがトルコの幸せ、その思いに嘘偽りも揺らぎも無かった。
…だがなぜだろう、月を見上げながら例のくせ毛はしょんぼりとうなだれていた。


クリスマスにケーキを差し入れる位は許してもらえるかねぇ。

それも駄目だったら…と考えて、ちょっぴり涙をこぼしてしまいそうになるトルコであった。



*あとがき的な*
土さんが日さんの別れの一言に衝撃を受けてますが、そもそもつきあってない。
オタ日さんは萌えとラブの両方をキープしようと頑張っている、らしい。
3日目終わったら速攻大掃除で蕎麦の準備だよ! 今年は年末ギリにイベントなので、お節はデパートのでいいかなとか思ってる。なんという主腐。