※夢見る少年菊くんです。
※夢見がちなので独白です。
※故にサディクさんの出番ナッシングです。
※土しょた日の意味は!?
…と思いつつも読んでみようかなという優しい方は下へどぞ。
菊、と優しく私を呼んで頭を撫でてくれる。
怖い夢を見て泣いていたら抱きしめて眠ってくれた。
とてもとても大切にしてくれる。
まるで夢のように幸せになった。
でも、幼い私は知らなかった。
彼が私の向こうに、父の面影を追っていたなんて。
大人になってからわかった。
菊、と呼ばれ振り返った私が笑えば彼が目を細める意味。
郷愁にもにた喜びと、親心からくる惑い、そんなところだろう。
彼は優しいひと、でも恋に狂ったひと。
私を抱きしめて、優しく、時折苦しそうに、菊と囁く。
私は、父や母が私にくれた名を知らない。
ただ、父と同じ『菊』という名をサディクさんに頂いた。
サディクさんの恩人であったという父、その父のように立派なひとになるようにとサディクさんがくれた名前。
けれど、もうひとつ彼だけの『菊』になるようにとの願いもあったのだろう。
私はそれを叶えた、それが私の願いでもあるからだ。
サディクさんに愛されたい、優しい彼が気遣う相手全部に嫉妬した。
だから、私は父が憎らしい。
けれど、父はサディクさんよりも母を選び私が生まれた。
ならば、私はサディクさんを選んで彼をもらう。
彼との縁をくれたこと、それは父にとても感謝している。
だけど越えられない思い出をもつ父に、やはり嫉妬せずにはおれなかった。
もちろんそんな事サディクさんには言えない。
彼は私が父を敬い、父のようになることを望んでいるのだから。
とても苦しい、とても悲しい、だけど彼の願いを叶えられるのは私だけだという優越感。
彼が求めるものは私の内にあるのだという安堵。
サディクさんは、私が父と違うふるまい…はっきりと彼への恋情を示す動作をすると、とても戸惑う。
それでも、優しい彼は子供の好意をこばまないし、喜びで劣情を刺激されそれを隠そうと四苦八苦している。
私はそれを初めて感じたとき、サディクさんはやっぱり私といるのがいやなのだろうかと悩んだものだ。
それが杞憂だとわかったときの喜びは、いかばかりだっただろうか。
けれど、自分から彼を、彼が淫らだという理由で私から遠ざけている行為に誘うことは出来なかった。
私は無邪気な子供のふりをして、彼にすりよるのが精一杯。
いつかサディクさんが、保護者の皮を全部脱ぎ捨ててくれる日を夢見ている。
時折、彼がゆめうつつの私の肌に口付ける行為が私の苛立ちをなだめてくれる。
寝ぼけたふりで寝返りをうてば、見えた肌を撫でさする彼の手の温度に本懐の日も近いと確信する。
そして不思議なことに、そうなればその密やかな真夜中のひと時が無くなるであろうことが残念でもあるのだ。
だって息を殺して私に触れるサディクさんは、とても可愛らしくて、愛おしい。
それとも、彼は私を焦らしているのだろうか。
本当はいやらしい子だと見抜かれているのだろうか、サディクさんは賢いひとだもの。
ああ、なんて恥ずかしい。
だけど、ああ、なんてなんて、心地よい。
ずっと彼に囚われて、その掌のうえで踊っていたい。
私は彼のもの、彼だけの『菊』でいたいのだ。
ああ、私が女の子だったならあと1年、16才でお嫁さんになれるのに。
サディクさんのお嫁さん、なんて素敵な響きでしょう。
ずっとずっとあのひとと一緒にいられる、魔法の言葉。
サディクさんが叶えてくれるのかどうかわからないけれど…。
もし少女だったらと夢想する、それもまた楽しい慰め。