T様に捧ぐ『土にょ日』

※トルコさんは帝国っぽいです。

※日本さんは先天性おなごです。

※美化しまくり大和撫子です。


※だからこれはパラレルな気持ちで書いてます。


※地理と時代は総無視!

 

※バカップルです。でもまだ始まったばかり…!!!

 


※注釈多いよ、でもオッケーバッチコイ!な方は是非どうぞ。












「伊達に乱世を越えてはおりません、覚悟を持ってのお越しでしょうね。
いかに旧知の貴方とはいえ、神仏伝統捨ててまでお力添えする訳には参りませんから。」


穏やかな口調とはうらはらに、日本の目は怜悧な光を、唇は強気な笑みを浮かべている。

火力ならば帝国たるトルコが上、だが地の利と他国の支援が絡めば日本に利がある、長引くのは得策ではない。
なにより、歴史深く国民どころか他国をひきつけて止まぬ黒髪の姫サムライである日本、彼女が旗印にある限り国民の心は折れぬだろう。
ましてや彼女を傷つけ地に這い蹲らせたなら、衝撃は悲哀よりも憤怒をもってこの島国を覆うだろう。
日本が男であるならいざ知らず、志し高い乙女たる日本は、国に住まうもの達の守護神でありながら彼らの守るべき母であり子供であり乙女であるのだから。


そして、トルコにとってもまた彼女はそんな存在であった。


「ああ、覚悟なら決めてきたぜ。国家の命運賭ける覚悟だ、こンな無粋な雰囲気で渡すなあ不本意だが受け取ってくれい日本さん。」

そう言ってトルコは羊皮紙の巻物を日本へと放り投げる。


「?」

宣戦布告…ならば今宣言すれば良いだろうにと怪訝そうな顔で受け取り目を落とすと日本は固まり、対するトルコは不敵に笑った。

「うちの言葉の下にあんたの国の言葉も書いてっから、わかるだろぃ?」

それは同盟という名の属国化を求める依頼書。
だが、過分に日本の国家政教固有文化一切に干渉せず、尚且つ軍事経済保護も行うという条件的に日本に甘いもいいところで、それはただの支配ではなく…過保護…というか…?

気づいて反射的に日本は顔を上げた。赤く染まる頬に戦の為にと短く切りそろえられた髪があたる。

「俺ァあんたが欲しい。
あんたに惚れてる。
あんたを守りてえ。
他のヤツになんざ指一本、いや目に触れさせるのも惜しいくれえなんだ。
俺の、嫁さんになってくれねえか。」


「…っ!?」

「返事を、聞かせてくれねえかい?」

「…なっ!!」

なんて、なんて不意打ちだろうか。彼が私に好意的なのは知っていた。
だがそれは私が彼を助けたからで、あれ以来彼は交易などで私に厚遇を図ってくれていた。
嬉しかった、西欧の列強と彼は、違うのだと親近感すら感じて、それは淡く温かい感情に変わり始めて…。
だからこそ、だからこそ彼が私のすぐ近くまで領土を広げ私すらその荒々しい軍力でもって踏みにじるのかと悲しかった。それを悟られぬように、絶対に弱さなど甘さなど気取られるまいと覚悟を決めて髪を落としたのに。

「…や、です。」

ピシ、とトルコの仮面にヒビが入る音がした。

あちゃー…
ほらやっぱプロポーズはムード無くちゃ…
大和撫子相手なんだから…
云々、トルコの背後からは何故か自国を責める言葉ばかりが飛び交う。


対して日本の背中では、青年達は乙女の清らかさに喝采を叫び、髪を切ったいきさつをなんとなく悟っていた年配のお歴々はさもありなんと同情的な表情を浮かべて頷く。

「わ、私、トルコさんのせいで髪切っちゃったんですよ!責任とってくださるまで、お嫁になんかいきませんから!」


… ん ?
 
なんとか拒絶の言葉を絞りだし、口をパクパクさせて日本が必死に吐き出した第2口撃に、両国民は首を傾げた。
ただし直ぐに日本の背側では、えー…?という残念そうなため息が広がる。国民柄、自国の空気を読むのも上手いのだろう。

次いでトルコも復活する。
衣服が濡れるのもかまわずザバザバと浅瀬を越えて、ガシッと日本の両手を取り必死で言い募る。

「俺のためにすまねえ!責任とる!いや頼むとらせてくれい!俺はあんたを悲しませた自分が許せねえんだ!」


「か、仮面も…。」

「こ、これが嫌いかぃ?」

それはちょっとどうしていいかわからない、ていうか全否定?とまたトルコの血の気がひいた。

「ふたりでいる時は、外してくれないと、イヤです…。」
真っ赤な頬を膨らませ潤んだ目で上目遣いに見つめられ、トルコは歓喜に震えた。

これは…日本さんのワガママ!?いやおねだり!?
ていうか今俺に甘えてんだよな!?

いつもいつも、トルコとて大概いい年だというのに日本には血気盛んな若者扱いをされて、幼い日本を知り砕けた親密感を漂わせるエジプトや中国を羨んだりしていたのだ。

「ああ、もうあんたは本当に奥ゆかしいな!」
感極まりたまらずトルコは日本を抱きしめた。

「嫁さんといるときにゃ仮面はいらねえ。むしろ邪魔でさあ。だからあんたがイヤなもんは無くなりますぜ。
他は、他にあんたのイヤなもんはありやせんか?」
もうなんでも来いと、うきうきとトルコは日本に頬ずりする。

ぎゅう、とトルコの腕をつかみ、日本は短く告げた。

「名前、呼んでください。」
「日本さん?」

日本はトルコの腕の中でフルフルと首を左右に振る。

「名前だけ、が、いいです。だ、て、トルコさんが旦那様なんでしょう?
だったら、さん付けとか…変です。
ちゃんと、呼んでください。」

腕を伸ばしトルコの包容の輪を解いて、日本は今度はキリッと落ち着いた顔でトルコを見上げる。

「え、あ、に、にほ…」

はっきり言ってとても嬉しいのだが、何故かどぎまぎと妙に照れくさくそわそわ手を動かすトルコ。
対して、手を胸の前で握りしめそのトルコを真剣に見上げる日本。


甘酸っぱい空気を展開する両国の後ろで、涙にくれたり安堵する兵士達は撤退を始め、軍の上官たちは改めて式典等の手筈を整える段取りを始めていた。
実は上司同士で今回のプロポーズの話は通っていたらしい。

「に、にっ日本さ…あ…に、日本!」
「はいっ!」

仮面ごと真っ赤になったトルコは嬉しそうに返事をする日本を見て、チクショウ可愛いすぎらあ、と再びぎゅっと抱きしめた。
強い抱擁にキュウと腕の中で小さい声で鳴く日本に、今度はトルコの胸がキュンと鳴った。

こうして、大和撫子日本と同盟という名の遠距離結婚をしたトルコさんは、嫁に横恋慕をする欧米や独立していく属国と色々ありつつも近代化をじわじわ成功させ、嫁と経済力が逆転して落ち込んだりもしましたが、近頃は(島という辺りが)嫁似の息子も出来、なんだかんだで幸せに暮らしましたとさ。

ただ、嫁が創作活動に邁進し年に2回ほどプチ鎖国するのがちょっと寂しいそうです。




おしまい。

09.04.16