小ネタログ3

☆幼なじみのきみ


ふぇ…ひっく

菊が泣いている!

「何してやがるフランシスー!!」
サディクはガサガサっと木陰から飛び出すとその勢いで菊の傍らにいた金髪の美青年の足に飛蹴りをくらわせた。
「うどわああぃいい!?」
菊をなだめるのに身体をまげその頭を撫でていたフランシスは、サディクの突撃に気付いて振り向いた瞬間受け止めきれずにつんのめって倒れた。

「大丈夫か菊!」
「さでぃくちゃんーさでぃくちゃんですー。」
菊はぎゅうとサディクにしがみついた。
「おう!俺が来たからもうでーじょーぶだぜ!」
「さでぃくちゃんー。」
わーん、と菊は更に声をあげて泣いた。

「もー、うるせえぞ菊。」
サディクは、菊の口を自分の胸に押さえ込むように抱きしめた。
むぐーと菊がくぐもった声をあげる。
「おいフランシス何しやがった。」
「あのね、先にごめんなさいでしょうが!おにーさんの美貌をなんだと思ってんの。」
パタパタと埃を掃うと、フランシスは呆れた顔で2人の前にしゃがみこむ
「るせ、男のくせにすり傷のひとつくらい大した事ねーだろ。だいたい女みてえな面なら、菊のがよっぽど上等じゃねーか。」
「きくは女の子じゃないですよー。」
ひっくとしゃっくりあげながら、菊が抗議の声をあげた。
「わーってらい、だから女みたいって言ったんじゃねーか。」
「あ、そっかぁ。」

うーん、微笑ましいのになんでかな、こっぱずかしいのは。
やれやれ、とフランシスは溜息をついた。

「おにーさんは、菊ちゃんがひとりでいるから声かけただけですよ。菊ちゃんはサディクにおいてかれて寂しかったんだよねー?」
よかったねぇ、とフランシスの長い指が菊の涙をぬぐうのでサディクはムッとした。
「別に、おいてったんじゃねえよ。」
「ふーん?」
「あの、あの、ふらんしすさん、さでぃくちゃんは菊のことおいてってないです。」
「ん?」
「菊が失くしたポチくん探してくれたんです。」
「おう、取り戻してきたぜ!」

意気揚々とサディクは、犬のぬいぐるみのキーホルダーをふりかざした。

ん?取り戻してきた?
首をかしげたフランシスに、サディクはベと舌をつきだした。


☆『今日と明日はお誕生日』

「ブエナースタールデス!ニホーン、おじゃますんでー。」

「あらスペインさん、こんにちは。」
「あれ、スペインにーちゃん。」
「あれ、なんやイタちゃんとドイツも来てたんかー。」
「スペイン、お前…仕事は…」

「えーあー、やー、ほら誕生日やし!特別特別!」
バシバシとドイツの背を叩いて、あはははとスペインは笑い飛ばした。

「はい、ニホン俺からのプレゼントやー
フェリース クンプレアーニョス!おめでとうなーv」

スペインがうきうきと差し出したのは、ハートの花束だった。
花ではないので花束というのは語弊があるかもしれないが、それは文字通り真赤なハートの花束のようであった。
「おやまぁ、覚えててくださったんですか?綺麗なハートですねぇ」
「あったりまえやーん、可愛いニホンの記念日やろ?」
いいこいいこーとロマーノにするのと同じように日本の頭を撫でるスペイン。
実際の年齢を考えるとする側とされる側が逆の動作なのだが、日本はあまり気にしていないようだ。

「それなぁ、飴ちゃんやねん可愛いやろー?ハートのロリポップー、最近日本にも店出来てんけどなーこれは本場直輸入やでー、俺の愛と一緒にーv」
スペインはにこにこと笑って日本の頬にキスをした。

「あら」「ヴェー」「…」

「てんめぇ何してやがるスペイン!!!!」

出た。
ドイツはイタリアを抱えて部屋の縁側よりに避難している。
なぜ台所にいながらスペインの行動が把握できているのかこの男は。
ドイツは毎度毎度のトルコの反応の良さに溜息をつく。

「えええええええ、なんでトルコおんのー!?」
「日本のめでてぇ日に俺がいねえ訳ねえだろ!茶ぁ入れてたんでぇ!とっとと日本を離しやがれっ!」
両手をワキワキとさせてトルコが、日本を抱き絞めたままのスペインに対峙する。

「いややー!日本離したら絶対殴る気やー!」
「離さねぇなら刺すぞ!」
「それもいややああああああああ!」

阿鼻叫喚である。

「トルコさん?」
「なんでぇ。」
「スペインさんを苛めないでくださいね。」
「苛めてねぇよ。」
「泣いてらっしゃるじゃないですか。」
よしよし、と自分にしがみつくスペインの額をなでなでとして日本は続けた。

「奥の六畳間に置いていた箱、取って来ていただけますか?」
「…今じゃねえとダメなのかぃ」
「はい、今必要なものですから。」
ニコニコと、顔色を変えずに日本がトルコを見つめれば、勝ち目が無いと知っているトルコは早々に白旗をあげた。へいへい、と少し拗ねた口調で言うと奥へと姿を消す。

「に、ニホン、俺この隙に帰るわー」
「あら、駄目ですよお渡しするものがあるんですから、待っててくださらないと。」
ニコと笑って、自分の袖を離さない日本にスペインは「ええぇ、でもトルコ怒っとるやんんんん」と情け無い声をあげてしゃがみこんだ。スペインの袖を握ったままの日本もつられてしゃがみこむ。
「大丈夫ですからいてください、ね?」
ね、と言いながら首を傾げた日本はとても可愛かったので、ついスペインは頷いてしまった。

「おう、持ってきたぜ。」
仮面に不機嫌を貼り付けてトルコが戻ってきた。
「はい、ありがとうございます。」

「ひやあああ」
日本が袖を放してトルコの側にいったので、スペインは慌ててドイツの背にまわりこむ。
「コラ、何をしている」
「トルコのムキムキに勝てるのなんかドイツしかおらんやーん。」
「うん、ドイツのムキムキはすごいよね!」
じたばたどたばたとしている欧州勢を微笑ましく眺めながら、日本はこいこいと手招きをする。
「トルコさん動いちゃダメですよ?」
「わあってらい。」
憮然として、その場に胡坐をかいたトルコを見て安心したのかスペインが四つんばいで日本のもとへ戻ってきた。

「渡すもんってそれなん?ニホン。」
「はい、これですよー。」
ジャーンと口で言いながら日本が差し出したその箱は、日本より手足の長いスペインでもちょっと抱え込んでしまうようなものだった。スペインがおずおずと受け取ってみれば、意外に軽い。

「?なんやろー?」
「お礼と、お祝いです。お誕生日おめでとうございます、スペインさん。」
1日早いですけど、とはにかみながら告げる日本に、スペインはパアアアッとそれは見事な笑顔になった。
「覚えててくれたんやーニホンーv」
「はい、お世話になったスペインさんの大事な日ですもの。」

わーわー嬉しいなーと言いながら箱を開けたスペインは、更に上機嫌でわーわーきゃーきゃーと叫んだ。
「これ、マジ○ガーのグッズとかDVDとか…ええのん?これもろてええのん?」
「グッズは、中古とかが多いので申し訳ないのですけど…」
「ええねんそんなん全然綺麗やでーこれー!もー嬉しいーv」
じたばたじたばたと喜ぶスペインわーわー、とスペインと一緒になって笑うイタリアと、苦笑しながら眺めるドイツ。それを見て、日本はニコニコと笑いながらトルコを振り返る。

「そういうことですから、苛めちゃだめですよ?」
「あー…祝いだってんならまぁ…。」
仕方無いと頭をかきながら、トルコはふふふと笑う日本に尋ねる。

「てかよお、もうちょっとこう…我侭っぽいして欲しい事ぁねーのかよお前は。」
朝から抱えきれぬチューリップの花束を届けてプレゼントに今日一日は何でも我侭きいてやると言ったのに、頼まれた事は客人の為の茶、とスペインを苛めるなのふたつってのはなんともつまらない。強いて言えば先ほどの箱を持ってこい、も数に入るのか。

「だって、一番のお願いはもう叶えて頂いてますもの。これ以上あなたにねだれば…なんだか罰が当たりそうで。」
ね?と言いたげに首をかしげる日本が思いのほか可愛らしく、トルコは頬が熱くなるのを隠すように、しゃーねーなと呟き首をまわす。

「あー菓子焼いてくっから、スペインも食うならいていいぞ」
「え、俺もええん?」
「祝いなんだろ、勘弁してやらぁ。」
「わー、嘘みたいやートルコが優しいー」
「うるせぇ、イヤなら帰れ」

「にーちゃんとトルコ、仲直りしてよかったねーニホン。」
「そもそも喧嘩でもないと思うんだが…」
「そうですね、おふたりともいいこでなによりです。」

記念日の今日に、大事な友達と愛しいひとと過ごせるなんてなんて素敵なんでしょう。
思ったが日本は口にせず、ただにこにこと笑っていた。
それでもポチくんと旧友たちには伝わっているようで、イタリアとドイツに前後から抱きしめられた。
面映くてでも嬉しくて、日本は2人の腕をぎゅうと握り返した。
その様子はとても微笑ましく、スペインはええなードイツお花畑やーんとのたまったが
「嫌がらせかぃお前ら…。」
げんなりとしたトルコの声に、3人は顔を見合わせて爆笑した。

 *   *   *   *   *   

「そーいやトルコやぁ、ドイツとイタリアには妬かへんの?」
「妬いてたらキリがねえんだよ、あのふたりにゃ。」
「へー…意外ー」
「俺ぁ寛容なんでぇ」
「嘘やー、ニホン限定やろー」
「おう、よくわかってんじゃねぇか。」


☆ボスサディクさんとトーニョさんとグプタさん

西「お疲れさーん、はいごほーびv」
むきだしのチュッパチャップス差し出し。
埃「ん」
素直に口にくわえる。
土「おめーらなぁ…」
西「ボスの分もあるでー?新作ケバブ味ー!」
土「どんな味でぇそりゃ;」

それでも受け取るサディクさんなのでした。




☆銅像の件(09.03.08)ネタにしました



☆不敬すみません、ほんとそういうのダメな方は見ないで!








「すみません、あなたとあなたのうちの方々のご好意を頂きながらそれを無為にしたばかりか、私が動くことすら許されておりません現状、お伺いすることも止められました。だから貴方をお呼びだてすることに…本当に…お詫びの言葉もありません。」

手をついて深く頭を下げる日本に、眼前のトルコはそわそわと手を組んではほどき、落ち着かなげに頭をかいた。

「あ、いや日本、そんなお前ぇ…。」


愛しい相手からの珍しい個人的な呼び出しに喜び勇んで来てみれば、生真面目な彼らしい呼び出しの理由。
件については、まあ、もちろん腹立たしく無い訳ではないが彼の気持ちも言葉もとてもありがたいく、受け入れるのに否はない。
惚れた相手に頭を下げられれば許してしまうのが男心だ、謝罪する相手を更に責めたてる程小さな男でもない。
しかも、今回は自分が下心満開で訪ねてしまった為か居心地悪くそわそわと落ち着かない。
甘い何かを期待してきた身としては、なんとも言えないもどかしさである。
あーうーと珍しくも言葉を探しているらしいトルコに、それでも日本は頭を上げない。

ままよ、とトルコは畳にぴたりと貼りついていた日本の手を取り握りしめた。
日本は誘われるまま顔を上げ、トルコの熱っぽい視線を正面から受け止めてしまい、慌ててうつむいた。


「なあ日本、人ってやつぁどうしようもねえ。良くも悪くも変わるし変わらねえし、俺たちにゃどうしようもねえ。
そんで、恋ってやつも同じくれぇどうしようもねえんだ。
だから、顔を、上げてくれねえか。」


トルコは目の前の小さな頭に口づけた、柔らかな髪からは淡く懐かしい匂いがする。
ぴくと震え日本はより頭を下げた。

「あんたにそんな事させちまう俺もあんたんちの連中も、俺ぁ、その、堪らねえんだ。」
なあ頼むよ、と吐息混じりにこぼせば、日本はようやく顔を上げた。

トルコはとても穏やかに笑いかけ、赤く色づいた日本の頬を撫でた。
目を伏せ、それでも逃げない愛しい人にトルコは安堵する。
そのまま、乾いた唇を指でなぞれば、誘うように開かれた。

誘われたなら、行かねばなるまい。愛しいひとに惑わされて何がいけない、全てこの身に巣くう恋が悪い。
けれど父である英雄にだけは不謹慎を詫びながら、トルコは日本の唇を肌を堪能した。

本当に、恋というのはどうしようもない。


09.08.15まとめ。